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残業代の算定基礎に含まれる手当(特に「在宅勤務手当」)について

2024/05/29

はじめに

令和6年4月5日付けで、厚生労働省から「割増賃金の算定におけるいわゆる在宅勤務手当の取扱いについて」と題する通達が発せられました。

これは、在宅勤務(テレワーク)の際に、通信費や光熱費が従業員の負担になるとして、この負担を軽減するために会社から支給される手当が、残業代の算定基礎に含まれるかについての考え方を示したものです。

本コラムでは、次の点について解説いたします。

・残業代計算の基本(残業代の算定基礎に含まれる手当と含まれない手当)
・在宅勤務手当の考え方
 

残業代計算の基本(残業代の算定基礎に含まれる手当と含まれない手当)

ここで、代表的な残業代計算をご紹介します。
残業代は、【1時間あたりの基礎賃金×対象の時間数×割増率】で計算されます。
さらに、「1時間あたりの基礎賃金」は【1か月あたりの賃金額÷1か月の所定労働時間】で計算されます。

この「1か月あたりの賃金額」というのは、従業員に支給している給与全てというわけではなく、手当については「含まれるもの」と「含まれないもの」があります。

含まれない手当については、法律上定められており、労基法37条5項・同法施行規則21条には、次の各手当が、残業代計算の基礎に含まれない手当として、列挙されています。
① 家族手当
② 通勤手当
③ 別居手当
④ 子女教育手当
⑤ 住宅手当
⑥ 臨時に支払われた賃金
⑦ 1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金です。

ここで注意が必要なのは、形式上、これらの名称の手当であれば全て残業代の基礎に入れなくてよい、というものではないことです。

これらの諸手当が残業代計算の基礎賃金から除外されるのは、労働との直接の関係が薄く、個人的事情に基づいて支給されていること等が理由とされています。

より詳しく説明すると、そもそも賃金というのは、名称の如何を問わず、「労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのもの」ですから、労働との直接の関係が薄いものは、残業代の基礎賃金とはいい難いということです。

そのため、例えば「家族手当」「通勤手当」「住宅手当」という名称であっても、従業員の個人的事情に関わらず、一律に定額を支給している場合は、結局のところ労働の対価としての性質を有するとして、残業代の基礎賃金から除外できないとされています。
 

在宅勤務手当の考え方

冒頭にあげた通達では、住宅勤務手当(テレワーク手当)が、「事業経営のために必要な実費を弁償するものとして支給されている」手当である場合は、残業代の基礎賃金から除外でき、そうでない場合には除外できないとの考えを示しています。

これはつまり、実費弁償として支払われるものは、「労働の対償」であるとはいい難いとの考えに基づいています。

通達そのものは、新しい考え方を示したものというよりも、テレワークの普及により、従来なかった手当が支給され始めたため、原則論に沿った考え方が示されたものといえます。
 

最後に

在宅勤務(テレワーク)を導入しているか、これに手当を支給しているかは会社によって様々かと考えます。

時代の変化によって、新しい名称の手当が普及し始めている等の事情もありますので、これを機に、残業代計算における基礎賃金が、法的に正しいかどうかはチェックしてみてはいかがでしょうか。

なお、本来は除外できない手当を除外していると、労働基準監督署の行政指導を受けることや、「支払われた残業代が不足している」として従業員から訴えられることになりかねません。

残業問題などでお困りの際には、是非ご相談ください。

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