まず、経営者の皆様には、解雇をした場合の法的リスクについて、正しく理解していただきたいと考えています。
解雇(普通解雇、整理解雇、懲戒解雇のいずれでも)をした後に、その労働者(社員・従業員)が裁判所で争ってきた場合には、①客観的な解雇理由と、②解雇の相当性の立証が求められ、これが認められない場合には、その解雇は「無効」と判断されます。
率直に申し上げて、解雇の有効性が裁判所で審理された場合には、ほとんどのケースで解雇は「無効」と判断される傾向にあります(日本において、解雇が難しいといわれる所以です。)。
では、万が一、解雇が裁判所において「無効」と判断されるとどうなるのでしょうか。
「解雇が無効」=「解雇していないのと同じ状態」=「その労働者はまだ在籍している」=「働いていなくてもその間の給与を支払わなければならない」ということになります。
解雇問題が裁判所で争われた場合、最終的には「解決金を支払って退職してもらう」という和解内容になることが多いのですが、理論的には、解雇が法的には無効であると結論づけられると、労働者は、裁判をしている期間中(働いていない期間)の賃金を支払ってもらったうえで、「復職」(職場に戻ってくる)することができます。
例えば、解雇を裁判所で争われて、この訴訟審理期間に2年かかったとします。
審理の結果、解雇が無効となった場合には、最悪のケースとして、「2年間分の給与の支払い」+「復職」という結果になります。
前述のとおり、実際には、解雇で争った労働者が現場復帰するというのも、心理的に難しいことから、解決金を支払って退職してもらうという和解をすることが多いのですが、この「解決金」も多額になることがありますので、注意が必要です。