「団体交渉」とは、労働者が加入している労働組合と会社が、組合員たる労働者の労働条件等について交渉を行うことをいいます。
この団体交渉の流れは次のとおりです。
⑴ 労働組合からの団体交渉の通知が届く
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⑵ 団体交渉の日時・場所の決定
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⑶ 団体交渉の実施(複数回)
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⑷ 団体交渉の終結
⑴ 団体交渉の通知
労働組合から「団体交渉申入書」等と記載された書面が提出されます。
まずは、慌てずに、書面の内容を確認してみてください。この書面には、団体交渉の議題(労働組合が要求する事項)が記載されています。
例えば、「解雇は無効だから復職を求める」とか、「パワハラを受けた」等の(元)労働者の個々の問題が要求となっているケースが多いものと思います。
⑵ 団体交渉の日時・場所の決定
団体交渉の通知を受け取った後は、実際に団体交渉を行う日時・場所を冷静に決めていきます。
通常、団体交渉の通知には、労働組合が求める日時・場所が記載されていますが、必ずしもこれに従う必要はなく、会社側から、再度、日時・場所を指定しても構いません。
団体交渉を完全に拒否したり、放置したりすることは、労働組合法で禁止される「不当労働行為」に当たりますので、団体交渉にはしっかりと対応していく必要があります(会社には、団体交渉に誠実に応じる義務があるとされています。これを「誠実交渉義務」といいます)。
⑶ 団体交渉の実施
団体交渉の当日は、交渉事項について詳しい人が出席するようにします(必ずしも社長が出席する必要はありません)。
弁護士にご依頼いただいた場合には、弁護士も団体交渉に出席し、会社の回答を補足したり、法的な事項について発言したりすることができます。
労働組合からの書面には、要求や主張が記載されていますので、それにどのように回答するか、その根拠資料として何があるか、予め対策を立てておきます。
この団体交渉は、会社と労働組合が合意するか、議論が尽きるまで、実施されます。
これは、私(弁護士 高橋)の考えですが、会社としては、正々堂々と、議論が尽きるまで、しっかりと腰を据えて、何度でも団体交渉に応じるべきと考えています。
⑷ 団体交渉の終結
団体交渉の終結には、2つの終結の仕方があります。
会社が誠実交渉義務を尽くした結果として、会社と労働組合の主張が平行線となり、議論が尽きたと評価されるケースが一つになります。この場合には、何も合意の書面が作成されないということになります。
これで労働組合から、何の音沙汰もなくなるかどうかはケースバイケースで、労働組合としては、次には、各都道府県の労働委員会に救済申立てをしたり、弁護士に依頼して、裁判を起こしてくることもあります。
もう一つは、会社と労働組合の主張が折り合い、この内容を合意書(和解書)にして終結するケースになります。
なお、会社には、団体交渉に誠実に応じる義務はありますが、労働組合の主張を全て受け入れないといけない義務はありません。
団体交渉では、法律の知識不足や労働組合からの圧に押されて、必要以上の譲歩をしてしまうケースも散見されますので、安易に、労働組合が用意した書面に調印しないよう十分に注意してください。