長時間労働やハラスメント等に起因して脳・心臓疾患/精神障害を生じるケースについては、それぞれ国が定めた認定基準があり、労基署は、この認定基準に基づき、労災に当たるかを判断しています。
1 過重労働等から脳・心臓疾患を生じた場合
過重労働等から脳・心臓疾患を生じた場合(例えば、働き過ぎで心筋梗塞で倒れたような事例)の労災認定基準は、次の①、②、③の該当性を考慮しています
(詳細資料:厚生労働省労働基準局長「血管病変等を著しく増悪させる業務による脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準について」)。
① 発症前のおおむね6か月間に、著しい疲労蓄積をもたらす特に過重な業務に就労したか
② 発症前のおおむね1週間に特に過重な業務に就労したか
③ 発症直前に異常な出来事に遭遇したか
上記①の「過重な労働」について、労働時間のみについていえば、おおむね月の残業時間が45時間以を超えている場合には、残業時間が長くなるほど業務と脳・心臓疾患の発症との関連性が徐々に強まるとされています(労災と認められるかは、その他の事情も総合的に考慮されます)。
2 過重労働等から精神障害が生じた場合
過重労働等から精神障害が生じた場合(例えば、働きすぎでうつ病になったような事例)について、労基署は、労災に当たるか否かの判断について、
「発病前おおむね6か月間に、業務による強いストレスが認められ、かつ、業務以外のストレス等により疾病を発病したと認められないか」という基準を考慮しています
(詳細資料:厚生労働省労働基準局長「心理的負荷による精神障害の認定基準について」)。
精神障害が労災に認定されるかは、各事情の総合的な評価ですが、長時間労働についていえば、1か月に80時間以上の残業時間が生じるような長時間労働は、精神障害を発症する可能性のある事情の一つとして評価されます。
過重労働に起因して疾患が生じた場合には、労災認定のみならず、後述の民事上の損害賠償請求にも発展するケースが多いと言えますので、会社は、労働者の健康に十分に配慮する必要があるといえます。